2026年は春の乾燥により、中欧の広い範囲で大麦の単収が落ち込みました。国別の生産量は明暗が分かれました。ウクライナとハンガリーは2025年を上回り、ポーランドも過去5年平均を上回りました。一方、チェコとスロバキアでは大幅な減産です。ビール大麦の品質は、国全体の生産量から受ける印象以上に、地域やロットによって大きくばらついています。
概要
| 国 | 生産量 | 2025年比 | 平均単収 |
|---|---|---|---|
| ウクライナ | 約550万トン | +12% | 4.42 t/ha |
| ポーランド | 約340万トン | 過去5年平均を上回る | 冬大麦は概ね4〜6.5 t/ha |
| チェコ | 約150万トン | 春大麦−24%、冬大麦−11% | 冬大麦5.73、春大麦5.06 t/ha |
| スロバキア | 約57万9,000トン | 20%近い減少 | 5.1 t/ha |
| ハンガリー | 約170万トン | +5.5% | 冬大麦4.6、春大麦4.0 t/ha |
出所:ウクライナはウクライナ穀物協会。米農務省(USDA)海外農業局(FAS)キーウ事務所は610万トン(+9%)と予測。ポーランドは農業省の推計(報道ベース)。チェコの前年比はチェコ統計局の7月時点の推計による。
ウクライナ
収穫と生育状況
ウクライナの2026年産大麦は、前年を大きく上回るペースで収穫が進んでいます。全国平均の単収は4.42 t/ha(UkrAgroConsult、同国農業省のデータに基づく)です。生産量の多い南部のオデーサ州とミコライウ州では、特に好調です。
シーズン全体の推計でも、2025年を明確に上回る生産量が見込まれています。ウクライナ穀物協会は2026年の生産量を約550万トン(2025年は490万トン)と推計しています。USDA FASキーウ事務所は、前年比9%増の610万トンと予測しています。
世界の大麦供給におけるウクライナ
ウクライナは現在も、世界で最も重要な大麦生産国の一つです。国土の半分以上が耕地で、農業は歴史的に総輸出額の約40%を占めてきました。長年にわたり世界の大麦輸出国の上位3か国に入り、世界の貿易量の15〜18%を供給した時期もあります。
2026年の増産を受け、USDA FASキーウ事務所は、2026/27年度(販売年度)のウクライナ産大麦の輸出量が2倍以上の約420万トンになる可能性があると予測しています。物流の状況次第では、世界の輸出に占めるウクライナのシェアも回復に向かう見通しです。
輸出物流と足元の買い付け環境
飼料用大麦は従来、大オデーサ圏の深水港(オデーサ、チョルノモルスク、ピウデンニ)からバルクで輸出されてきました。これらの港は通常、ウクライナの穀物輸出の大部分を扱っています。ここ数週間は港の取扱量が落ち込み、ルーマニア、モルドバ、ポーランドを経由する鉄道・ドナウ川ルートへの振り替えが増えています。飼料用大麦のように比較的単価の低いバルク商品にとって、こうしたルートの追加コストは小さくありません。UkrAgroConsultは、コンスタンツァまでの鉄道輸送費を1トン当たり60〜70米ドルと見積もっています。
その結果、十分な量が収穫された2026年産大麦は現在、国内で国際指標価格を明らかに下回る水準で取引されています。品質の良い大麦の多くが、輸出能力の回復を待って事実上国内にとどまっている状況です。
ポーランド
ポーランドの公式データからも、2026年産が強い水不足の下で生育したことが確認されています。ポーランド中央統計局(GUS)は、第1四半期から春にかけて降水量が異例の少なさだったと報告しました。その後、ポーランド土壌学・植物栽培研究所(IUNG)の農業干ばつ監視システムも、国内の広い範囲で冬作・春作の穀物が干ばつの影響を受けていると判定しました。
収穫初期の結果は、地域によって大きく異なりました。UkrAgroConsultによると、冬大麦の単収は多くの農場で4.5〜5.0 t/ha前後、干ばつの影響を受けた圃場では3 t/ha程度にとどまりました。続報では、観察された圃場の大半が約4〜6.5 t/haでした。6.6〜9 t/haに達したのは、保水性の高い良好な土壌の一部の圃場に限られたとしています。初期の入荷分は容積重が低めで、品質のばらつきも大きいと報じられています。
その後の報道では、ポーランド農業省の推計として、大麦の総生産量を約340万トンとしています。過去5年平均の300万トン弱を上回る水準です。
現時点で、国全体として大麦が不足する兆候はありません。ただし、これをビール大麦グレードの供給に余裕がある根拠と受け取るべきではありません。2026年産の契約にあたっては、タンパク質含量、発芽率、篩下、水分、容積重を供給元・ロットごとに確認することが引き続き重要です。
チェコ
チェコ統計局は、7月15日時点の状況に基づく2026年産の第2次収穫予想を発表しました。主要穀物の生産量は639万2,000トンで、前年比16.9%減、過去5年平均比13.1%減です。このうち春大麦は約86万2,000トン(前年比24.3%減)、冬大麦は約63万7,000トン(同10.5%減)と推計されています。
その後、収穫がほぼ終わった段階の調査で、状況がより明確になりました。8月16日までに、冬大麦は作付面積の99.99%、春大麦は99.33%で収穫を終えています。平均単収は冬大麦が5.73 t/ha(生産量約65万8,000トン)、春大麦が5.06 t/ha(生産量87万トン近く)でした。
製麦品質
麦芽調達の観点では、今シーズンの品質調査の結果は良好です。ブルノのビール醸造・製麦研究所は、農業省の調査プログラムの一環として、8月17日までに2026年産ビール大麦71検体(春大麦62、冬大麦9)を分析しました。
| 項目 | 2026年平均 | チェコ規格 |
|---|---|---|
| 粗タンパク質 | 11.3% | 10.0〜12.0% |
| 発芽率 | 98.9% | – |
| 整粒(2.5 mm以上) | 91.4% | 85%以上 |
| 容積重 | 66.9 kg/hl | – |
| フォーリングナンバー | 361秒 | – |
穂発芽の目立った兆候は見られません。農業省は2026年産の製麦適性について、これまでのところ非常に良好で、特にビール用春大麦で優れていると評価しています。
これらはあくまで速報値で、全国の品質を最終的に評価したものではありません。冬大麦の検体数も比較的少数です。それでも現時点の情報からは、チェコの穀物生産量は前年を大きく下回るものの、2026年産ビール大麦の品質は概ね良好と判断できます。
スロバキア
ロイターによると、スロバキア南部では6月、同国の記録上最も早い大麦の収穫が始まりました。4月と5月が異例の乾燥となり、生育が早まると同時に単収の潜在力が低下したためです。影響は地力の低い土壌や灌漑のない圃場で最も大きく、灌漑された圃場は総じて良好でした。
最新の公式データも、大幅な減産を裏付けています。スロバキア統計局による2026年産の第2次推計では、大麦の総生産量は約57万9,000トンで、前年を20%近く下回りました。平均単収は5.1 t/ha(2025年は6.1 t/ha)と推計され、過去5年平均を約3.2%下回っています。
圃場ごとの成績は土壌条件や水分の確保状況によって大きく異なるため、今シーズンは特にロットごとの品質確認が重要です。
ハンガリー
ハンガリーは2026年の生育期に深刻な干ばつと高温に見舞われ、大麦のヘクタール当たり単収は大きく落ち込みました。ただし、ハンガリー農業経済研究所(AKI)が発表したほぼ最終の収穫データを見ると、全国の生産量は、単収の低さから想像されるよりかなり良好です。
冬大麦と春大麦を合わせた収穫面積は約37万3,400ヘクタールで、2025年を26.2%上回りました。大麦の総生産量は前年比5.5%増の約170万トンに達しました。全国レベルでは、作付面積の拡大が単収の低下を補って余りある結果です。
一方、単収そのものは大幅に悪化しています。AKIのデータに基づくその後の報道によると、冬大麦の平均単収は約4.6 t/ha(前年比16.3%減)、春大麦は約4.0 t/ha(同15.4%減)です。
まとめ
今シーズンは、5か国それぞれで調達環境が異なります。
- ウクライナは2025年より生産量が多いものの、港湾の取扱量が落ち込み、その多くが国内にとどまっています。品質の良い大麦は、輸出能力の回復を待つ間、国際指標価格を下回る水準で国内取引されています。
- ポーランドでは国全体として大麦の不足は見られませんが、収穫初期のデータでは単収と容積重のばらつきが大きくなっています。ビール大麦グレードの選別とロット間の均一性が引き続き重要です。
- チェコは穀物・大麦ともに生産量が2025年を大きく下回りますが、速報段階の分析結果では、特にビール用春大麦の製麦適性が非常に良好です。
- スロバキアは全国の生産量が2025年を20%近く下回る大幅な減産です。干ばつの影響にもむらがあるため、一段と厳格な品質管理が必要です。
- ハンガリーはヘクタール当たり単収が大きく低下したものの、作付面積の拡大で総生産量が2025年を上回り、全国レベルでの不足はありません。製麦品質は全国の生産量から推し量るのではなく、供給元ごと・ロットごとに評価する必要があります。